都立高校志望校調査(校長会調査)の分析

第一志望の傾向

 令和6年3月の公立中学卒業予定者 (令和5年度現在の公立中学3年生) は、78,108名で、前年を416名上回ります。公立中学3年生の数は3年前に底をうち、増加しはじめました。令和12年度(現小学2年生が中学3年生になる年度)をピーク(約8万名近く)として漸増、その後5年間で15,000名急減する見込みです。
 都立全日制高校の募集全体は395名減で、上述の中学校卒業予定者416名増に対して少ない数になっています。これは東京都教育委員会による就学計画において全日制高校への計画進学率を1%引き下げたことによるもので、最近の6年間で同様の措置(1%引き下げ)は3回実施されています。背景には全日制高校以外の通信制高校への進学者が増え続けている実態があります。
 都立全日制高校第1志望者の割合は連続して減少しています。私立全日制高校(国立・他県含む)第1志望者は増加を続けていましたが、最近2年間は一服した形です。15年前のリーマンショック以降、都立第1志望者の割合は70%台でしたが、6年前に私立志望者が増加し、その後さらに私立高校への流れが進みました。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(実質授業料無償化の対象になる家庭年収の上限が760万円から910万円へ拡大、さらにその上限もR6年度に撤廃)や、私立高校の入試相談制度(コロナ禍で早く合格を決めたい心理と結びつく)にあると推測できます。
 また、私立通信制高校を志望する生徒も増え続けています。平日に通学するタイプ(週1日・3日・5日など)や、ネットを活用した授業形態、多様な授業内容は、コロナ禍でさらに生徒や保護者からの人気が高まっているということでしょう。
 都立高校に関して詳しく分析すると、倍率が落ち着いている例として、小山台・小松川・足立・松原・清瀬などがあり、復調してきている例として、南葛飾・向丘・板橋・紅葉川・杉並など、また新校舎効果も加わって堅調な例として、竹台・城東・豊島など(江北はやや一服)が挙げられます。他にも、上野・本所・葛飾野・晴海総合・第三商業などの志望者が増加しています。
 普通科以外では、専門色がはっきりと伝わる学科や、時代の要請 (グローバル化・情報技術化・デザイン・美術・舞台表現・動物・環境系…)に即した学科、身につけた資格・技術・感性が自身の一生を充実させたり豊かにさせたりすると思える学科は人気があります。 例としては、国際・多摩科学技術・工芸(デザイン・グラフィック)・園芸(動物)・瑞穂農芸(畜産)・総合芸術(美術・舞台表現)などが挙げられます。立川に続き、2校目の理数科(創造理数科)設置校となった科学技術は、大学並みの実験施設がさらに活用され、今後の動向が注目されます。

都立高校の今後の動向

 男女別募集を行っている学校では、3段階のステップを経て6年度入試から完全な男女合同募集になります。推薦入試での女子合格増が予想されます。
 校舎改築途中の学校や計画段階に入っている学校は、志望者の動向に影響を及ぼします。高校3年間の学校生活を念頭に置けば、グラウンド整備や各種施設改修の状況も重要です。すでに校舎・施設・グラウンドが完成している学校としては、日比谷・板橋・江北・竹台・足立・足立新田・南葛飾・城東・小岩・篠崎・第三商業・王子総合などがあります。今後は中野工科・桐ヶ丘・高島・調布北などが工事の実施となる予定です。
 都立定時制単位制高校 (昼夜間定時制)は、生徒の多様性・不登校・学び直しへの対応が期待でき、居心地のよさなどもあり、中退率の低下にもつながっています。定時制の学費は全日制よりもかなり安価ですが、公立高校の就学支援金制度で、授業料についての差はなくなっています。
 チャレンジスクールとして、小台橋(令和4年度に荒川商業を改編)が新設され、令和7年度には立川地区にも設置される予定です。「好きなものを、好きなときに、好きなだけ」科目選択できるという合言葉を掲げており、普通科とは違う特色のある教育が期待されています。